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光学式エンコーダおよび LiDAR スキャニング

概要

ドライバが GPS に目的地を入力するだけで、詳細な道順と、走行距離および時間、路面状況や危険箇所、さらには代替ルートまでもが一瞬で表示される。当たり前のものと考えられている現代のこの科学技術。しかし、このシステムを機能させるには、国全体の道路網を極めて正確に網羅した最新の地図が必要である。

ただでさえ簡単でない作業だが、大きな国では一層困難となる。例えば、人口規模が世界最大、国土面積も第 4 位という中国の場合、その道路網は約 440 万キロメートルにも及ぶ。これだけの規模の道路網を地図にするのは、途方も無い難題だ。

世界の大手 LiDAR (Light Detection and Ranging: 光による検知と測距) メーカーの多くが、レニショーの高性能光学式エンコーダを搭載した車載型 LiDAR レーザースキャニングシステムを開発しており、道路地図の作成と調査を目的とする高精度の三次元測定データを提供している。この技術は、衝突回避や料金所での近距離車両検知システムなど、さまざまな用途に応用できる可能性がある。自律走行車も、道路地図の品質と解像度の向上を促す大きな要因となるだろう。

LiDAR メーカー各社は、自らの設計目標を達成するために、レニショーの ATOM™、ATOM DX™、QUANTiC™、TONiC™ インクリメンタルエンコーダを活用している。

LiDAR のしくみ

LiDAR は、対象物に光線を照射する光学式リモート検出技術である。10 年前にカメラ搭載車が道路の撮影に導入されて以降、レーザースキャンの普及は大きく進んでいる。LiDAR スキャニングシステムは、回転スキャンミラーとレーザーレンジファインダ、さらには、GPS や慣性計測ユニット (IMU) といったセンサー類を含む各種測位/配向システム (POS) で構成される。LiDAR では 2D レーザースキャニングが用いられており、最大 40°の水平面 (方位角) と垂直視野 (FOV) を有する 360°パノラマデータにアクセスできる。

レーザースキャナ (図 1) は、各パルスの帰還時間 (飛行時間) を利用して、対象物までの距離を求める。パルスが帰還するたびに、(GPS と IMU からの) スキャナの位置と向き、スキャンミラーの角度、対象物までの直線距離を用いて XYZ 座標が計算され、共通の基準システムと整合される。このパルス帰還の集合は点群と呼ばれ、

3D で直接可視化できる。写真測量情報が利用可能であれば、デジタルカメラの静止画という形でカラー表示することも可能だ。LiDAR スキャナは、一度に 1 点だけを測定する従来のレーザー測距装置よりもはるかに効率的である。

LiDAR スキャニング実行中の様子

図 1: LiDAR スキャニング実行中の様子

LiDAR の光学部品とエンコーダ

図 2: LiDAR の光学部品とエンコーダの図

LiDAR の光学部品とエンコーダ

LiDAR スキャニングシステムには、ノディングミラーとポリゴンミラーという 2 種類のミラーシステムの概ねどちらかが使用されている。主流はノディング (傾斜) ミラーだが、どちらのタイプも、スキャンパターンのクローズドループフィードバック制御にロータリエンコーダを使用している。ロータリエンコーダが、傾斜軸に対して時計回りおよび反時計回りにミラーを傾けられる電磁モータと一緒にミラーシャフトに搭載されることがほとんどだ。

ノディングミラーの傾斜軸が、装置の垂直 FOV を司る (図 2 参照)。ベースを中心に LiDAR システムのハウジングを回転させることにより、360°パノラマデータが取得される。3D 画像の解像度と精度を高めるために、このシステムを 1,000rev/min 超の高速で回転させることが、メーカー各社から求められるようになってきている。

その要求に応えるには、精密なフィードバック制御を行うのためのロータリエンコーダに加え、ベースを中心にハウジングを回転させる第 2 モータも必要となる。それに対し最新型のレーザースキャナは、レーザーダイオードとフォトダイオードを並べてペアで用いることによって点群密度を高め、可動部の数を減らしている。そのため、現在のスキャニングシステムには、LiDAR システムのベース上にロータリエンコーダが 1 台あるだけである。角度誤差によって画像が歪み得ることから、これらの用途では、エンコーダの精度がまさに命綱といえる。

現在主流の車載用 LiDAR スキャナは、最大測定範囲 120m で、角度分解能は±0.1°未満である。一般に、最長 100m の距離を誤差 2cm 未満で測定できる。

ミクロの技術

RCDM と ATOM™

車載用 LiDAR スキャナは、ルーフに搭載されるため、体積と重量が共に大事な要素だ。LiDAR メーカーは今、高精度で軽量・小型のレーザースキャナの開発を進めている。軽量で小型の LiDAR システムを設計するには、スキャナ内の部品すべてが、低容積・低質量という基準を満たす必要がある。

レニショーの ATOM ロータリインクリメンタルエンコーダは、超小型リードヘッドと小径の RCDM ガラススケールにより、高精度と省スペースの両立を目指す設計者の自由度を大きく高めている。また、レニショーからは、RESM リングと使用する小型で高性能の TONiC エンコーダもラインナップしている。

密閉型のロータリエンコーダだと、想定される作業環境で高レベルに達し得る汚染物質や微粒子/汚れに対しては高い耐性を発揮するものの、精度を満たせない。しかし、レニショーの最新光学式インクリメンタルエンコーダなら、優れた汚れ耐性を有しながらも、メーカーの要件を十分に満たすことができる。

ATOM は、省スペース性に優れた、最小リードヘッドサイズ 6.8mm×20.5mm×12.7mm の超小型エンコーダである。また、他のレニショー製光学式エンコーダに採用しているフィルタ機構を搭載している。オプティカルフィルタ機構により、信号の安定性とスケールの汚れに対する耐性を向上しており、周期誤差を抑えている。

簡単・便利に取付け可能

高精度が要求される用途向けのエンコーダを選択するに当たっては、簡単かつ正確に取り付けられることが大事な要素である。表面読取りのガラススケールは、回転軸とディスクスケールと同心となるよう取り付ける必要がある。そこで、ATOM エンコーダでは光学式アライメント技術が利用できる。すなわち、偏心誤差を補正するための調整も、顕微鏡観察によって簡単に行えるため、短時間でスケールを取り付けられる。

TONiC™ UHV と RESM のアイコン

また、レニショーでは、作業者のスキルに依存しない方法も提供している。2 個のリードヘッドを 180°離してディスクスケール上に配置するデュアルヘッド DSi だ。作業者がディスク位置を調整して 2 個のリードヘッド間のカウント差を最小限に抑える。さらに、TONiC RESM リングにも同様の取付け支援機能があり、非常に安定した信頼性の高い動作を実現する。TONiC および ATOM の両シリーズには、取付けと整備を速やかに行うためのセットアップ LED が備わっている。また、診断キットもオプションで用意している。

3D スキャナの未来

路上から視認できるリアルで詳細な 3D 都市モデルを作成するための取組みがすでに始まっている。仮想世界との関わり方を変える巨大な成長産業であるジオマティクス (LiDAR 技術を含む)。高精度でコンパクト、優れた設計のエンコーダシステムは、3D LiDAR スキャナに不可欠な部品であり、大手メーカーに、最適な設計ソリューションを作成できる自由をもたらしている。

レニショーの光学式エンコーダ全製品の詳細については、www.renishaw.jp/encoders をご覧ください。

 

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