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日焼けの痛みを緩和 - 乳液の共焦点ラマンイメージング

2020 年 5 月 29 日

夏を目前に控えたこの時期は、子供たちに日焼け止めクリームを塗るという恒例行事の幕開けでもあります。子供たちは理解していませんが、日焼け止めクリームは、高度に進化した乳液であり、自然に立ち向かう人類の努力の賜物、つまり、私たちの生命を守ってくれる存在なのです。そこで、inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープを使用して、この強力なクリームの奥深くを覗いてみましょう。

医薬品と同様、クリームや乳液も、材料分布の均一性が品質を左右することが少なくありません。UV 対応日焼け止めクリームには、紫外線を吸収する物質 (通常は有機質) または反射する物質 (通常は無機質) が含まれているため、粒子のサイズと分布が非常に重要です。分布が不均一だとクリームが均一に塗れず、無機粒子が小さいと、紫外線を反射しても、可視光に対する肌の露出を完全には防げないからです。日焼け止めクリームは、店の棚から、バッグや車の中まで、多様な条件や温度で保管されます。製品の均質性と分布が仕様の範囲内であることはとても大切で、工場出荷時から日差しの強い日に至るまで、最も求められるときにこそ、確実に仕様を満たす必要があります。

スライド上の日焼け止めクリーム

inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープは、実にパワフルなイメージングシステムで、クリームが半固形状であっても乳液状であっても、水に溶けていても別の溶媒に溶けていても、その調製や研究に役立つ理想的なツールです。日焼け止めクリームを分析するために、私は、少ないサンプルに標準的なガラス製のカバーを被せました。その後、開口数の大きい (NA) カバースリップで補正した油浸対物レンズを用い、ラマン分光によってサンプルを分析しました。この対物レンズは、時間をかけてクリームをサンプリングする場合でも、最適な共焦点性能とデータ収集効率を提供します。その後、inVia で StreamHR Rapide と Empty Modelling™ 機能を使用したところ、数分で全量のデータを収集できました。

生成された画像は、さまざまな粒子の形状、サイズ、組成、サンプル全体での分布などを詳細に示しています。すべて 1 回のスキャンで得られたものです。この事例から、無機 TiO2 と有機グリセリンが、乳液粒子のバルクを形成していることがわかります。下のビデオは、サンプルの深度を下げるにつれて粒子がどのように変化するかを示しています。ラマン散乱光の特異性のため、追加物質も同じように調べることができ、さらに詳しい情報が得られます。メーカーや研究者は、このようなデータからクリームを研究し、改良できます。

現在生産されているクリームが実に効果的であることは確かですが、それでもまだ改善の余地があります。人間と自然にとって特に懸念されるのが、毒性です。葉に含まれる物質に似た化学物質を使用した研究が現在行われており、これによって新世代の日焼け止めクリームが生まれる可能性があります。新たに調製された乳剤に対しては、調査が必要です。ラマンイメージングは、新しい日焼け止めクリームの技術を理解し、その効果と均一性を確保して実用化につなげるのに理想的なツールです。

今夏の日差しから身を守りつつ、クリームの科学についても考えてみてください。

執筆者について

Tim Smith, Applications Manager

ティム・スミスの顔写真

Tim は、各種ラマン研究機器の使用経験が 20 年を超えており、ほとんどの応用分野で、システムに関する豊富な知識と実使用経験がありますが、特にラマンイメージングと製薬分野に精通しています。

2007 年には、StreamLine イメージングを高解像度化学イメージングに大規模に応用するプロジェクトを主導しました。最近では、材料のライブフォーカストラッキングと、化学的および形態学的な相関イメージングに力を入れています。

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