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ドゥカティ社:独自設計カムシャフトの生産において工具折損検出は不可欠

ドゥカティでは、スモドロミックエンジンの大切なコンポーネントの加工を慎重に制御する必要性を認識しました。一年間に、様々な工具が何十万回も使用されるため、ツールマガジンから欠けたり折損した工具が選択されると、深刻な問題を引き起こす危険性が常につきまといます。この問題を解決したのが、革新的な非接触式レーザーテクノロジーを使用したレニショーの工具折損検出システムでした。

デスモドロミック・カムシャフト生産で最も重要な工程は、Stama社マシニングセンター2機での機械加工です。年中、ノンストップで操業、多様なドゥカティ・エンジン、全機種に搭載するカムシャフトを生産しています。

ドゥカティ・モーターの製造技術スペシャリスト、フルヴィオ・アッボンディ氏は、次のように説明します。「シャフトの製造には高い精度が要求され、すべて自社工場で複雑な加工プロセスを実施しています。これは、非常に高価なコンポーネントです。特殊な合金鋼製で、加工が始まる前の最初の荒削り後のブランクの状態でも高価な資材です。」

カムシャフト製造プロセスでの工具折損は、特に深刻で、スクラップ、高額な再加工、そして時間の無駄につながります。たとえば、機械の主軸を損傷することがあれば、特殊な工具自体の費用に加えて、合計数千ユーロの出費になることが考えられます。

デスモドロミック機構採用のカムシャフト

コントロールが可能に

アッボンディ氏は、工具折損検出システムの果たす役割についてこう語ります。「機械が実施する作業のチェックを行うことが不可欠です。レニショー NC4 システムは2 つのマシニングセンターに取り付けられ、工具が加工準備の整った主軸に装着された直後に、システムから発せられたレーザー光を設定された高さで通過したところで検出を行います。長さ 100mm のものが 97mm である場合など、工具の先端が折損している場合は、レーザーシステムからアラームが出されます。各工具は、それぞれ長さや直径が異なるため、検査用ビームを工具が通過するときに、システムはこの点を基に判定します。」

さらに彼はこう続けます。「NC4 は、エンジンが適切に作動するために不可欠となるカムのキーや他のリファレンスポイントの加工のために使われる小型の工具の折損も検出できます。レニショーシステムがなかったら、折損した刃先を使用して機械加工を継続させることになり、大損害を被る結果もありえます。また、工具の折損は自動的にチェックされるので、オペレーターはワークをセットして、全てがスムーズに動いていることを確認するだけ。一人のオペレータが簡単に 2 台の機械を管理できます。

工程管理は加工に不可欠

アッボンディ氏は次のように説明します。「当初は、工作機械メーカーにより提供された、スピンドルモーターの使用パワーをチェックするシステムを取り付けていました。このシステムは、機械加工中の応力が最も顕著となる深穴を加工するために使用する大型工具の磨耗度をチェックするものです。トルクが増加した場合、工具の磨耗を意味するため、アラームが出されます。しかし、同時に小型工具の折損を短時間で確実に検出する能力も必要でしたが、通常ほとんどの検出システムでは、小型工具の折損検出は困難でした。」

従来の接触式検出システムは、特定の弱点があり、通常小型工具には不向きです。これは、工具がボタンかロッドに接触することで、システムが作動するためです。さらに、接触することで工具が折損する危険性があります。そのため、低速でしか検出できないことになり、プロセスのスピードが低下し、サイクルタイムが大幅に増加します。通常、これらのシステムは機械の動作範囲に取り付ける必要があるため、貴重なスペースを占有し、衝突の危険性が生まれるだけでなく、接触式システム自体が切粉などで動作不用を起こし検出の信頼性が低下することがあります。レニショーのシステムが接触式に代わって採用されたのは、このような理由からです。

レーザー光線でチェック

レーザー技術の向上により、より小型の工具も安全に計測できる非接触式検出システムが開発されるようになりました。レーザービームは、機械のテーブル上か機械内に向き合ってに取り付けられた発信機と受信機の間を通過するため、ビームが加工エリアを横切ります。工具がビーム上に入ると、受信機により検出される光量が減少し、トリガーパルスが出力されます。光の減少が検出されないと、システムから工具折損信号が出力されます。

NC4非接触式工具計測システム

デスモドロミック システム

世界の自動車メーカーのほとんどは、エンジンにリターンスプリングを使用してバルブ(排気弁と吸気弁)を閉じていますが、これらのスプリングにより動作後にバルブが元の位置に引き戻されます。この例外がドゥカティで、あまり一般的でない スモドロミック システムを採用して大きなメリットを得ています。スモドロミック 方式により、スプリングの慣性による問題を解決し、動作時の摩擦を約 30% 低減することで、高速でのエンジンの信頼性を実現します。論理上は、エンジン回転が容易に 20,000rpm 以上に到達することが可能です。

スモドロミック の機械式によりバルブを閉じるという概念は、アメリカで生まれたものですが、過大なコストのために断念されました。しかし、ボローニャに拠点を置く名高いドゥカティでは、1972 年に スモドロミック 方式を 2 シリンダーエンジンに採用し、以来数十年にわたってこれを成功させています。バルブは単純なスプリングの代わりに特殊なカムで閉められるため、あらゆる面でバルブとその位置に厳格な繋がりが生まれます。スモドロミック という単語は、リンクを意味するギリシャ語の「desmòs」を語源としています。

スモドロミック システムでは、カムシャフトのようなコンポーネントの設計と製造が大幅に複雑になります。カム自体は従来の単純なカム形状ではなく、特殊なリフティングランプを採用しています。ドゥカティの設計チームは、要求される加速とスピードを達成できるよう、慎重にこの形状を設計しています。これについては精度がすべてで、軸とカムの間のクリアランスは組み立て中、手作業で調整され非常に重要な作業になっています。アッボンディ氏はこのように説明します。「自動車の油圧式タペットのように、ゆるみを調整すればいいというものではありません。下と上にパッドが 1 つずつ使用されていますが、これらを極めて高い精度で調整する必要があります。」

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  • ケーススタディ:  Ducati - ドゥカティ:独自のカムシャフト製造を支える工具折損検出システム