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モーションプラットフォームに採用された UHV 対応光学式エンコーダ

真空技術は、多くの精密製造工程で活用されている。例えば一般的な例として、半導体ウェハの検査、ウェハの接合、フォトリソグラフィ、薄膜の蒸着などが挙げられる。

この複雑な工程で使われるシステムのひとつがモーションプラットフォームであり、真空環境への対応が求められる。

TONiC™ UHV はフラットパネルディスプレイ製造装置や半導体製造装置の厳しい要件を満たすことができる、超高真空での使用を前提に開発されたエンコーダである。VAD Instrument 社 (韓国) は半導体や FPD、エレクトロニクス分野で使われる精密モーションステージを幅広く手掛けているメーカーである。

同社の最新真空対応プラットフォームには、レニショーの TONiC UHV エンコーダと RLE レーザーエンコーダが採用されている。そしてこの導入によって、モーションコントロールのパフォーマンスを向上できた。

課題

真空または超高真空 (UHV) は、閉鎖空間 (真空室) からポンプなどで空気を排出することで作り出される。

近代的な精密産業プロセスは、空気中に含まれる汚染物質の影響を抑えるために真空環境で行われるものが多い。真空対応のモーションプラットフォームは、専用のベアリング、ガイドレール、モータなどから構成される。真空環境ではモータの排熱が問題となることが多く、冷却システムで厳密に管理する必要がある。また、真空対応コンポーネントには内部の空気を無視できるほどに取り除くことも求められる (RGA 分析で測定可能)。

真空室に取り付ける光学式エンコーダ (リードヘッドとスケール) には、UHV でのベークアウトに耐えられる高温耐性 (>100℃) などさまざまな特徴がある。特徴としては他にも、高い清浄度、リードヘッド内部の空気を完全に除去するための空気穴、PTFE 絶縁と銀メッキ銅縒りのケーブル、シールではなくレーザーによるラベリングなどが挙げられる。

質の高い真空対応製品であれば真空環境を作るまでの時間を短縮できたり、プロセスコントロールを向上できたり、スループットを拡大できたりといったメリットを期待できる。

半導体ウェハ検査 (AOI) に使われる真空ステージ。RLE レーザーエンコーダが取り付けられている。

半導体ウェハ検査 (AOI) に使われる真空ステージ。RLE レーザーエンコーダが取り付けられている。

半導体プロセス用の真空ステージ

半導体プロセス用の真空ステージ

レニショーさんの位置フィードバックシステムは性能がよいだけでなく、コスト面でも優れています。それに、テクニカルサポートにはよく助けていただいていますし、トレーニングも充実しています

VAD Instrument 社 (韓国)

解決策

VAD 社では、真空環境で使用できる精密モーションプラットフォームなどを設計および製造しており、同社のモーションコントロール製品にはレニショーの TONiC エンコーダが採用されている。

VAD 社の President である Baek-Kyun Song 氏は以下のように説明する。「当社のプラットフォームの標準モデルには RTLC ステンレススチールテープスケールを使用しており、パネルの AOI 用装置など、より高度な真空用途には精度がより高い RELM スケールを使用しています。リードヘッドとしては TONiC を採用していて、接続するインターフェースは真空室の外に配置しています。高性能なエンコーダは市場に多数ありますが、真空に対応している製品は数えるほどしかなく、レニショーさんの TONiC UHV は性能と信頼性の両面で非常に優れており、我々としては他の製品は考えられません」

TONiC UHV は、ケーブルからリードヘッドに至るまで、10-9mbar 以下の真空を想定して設計されたエンコーダである。RFI シールドケーブルを採用しており、動作原理や仕様、パフォーマンスは TONiC の標準モデルと同じであるが、クリーンルームや真空対応の材質から作られており、リードヘッド本体から空気を完全に排出できる設計になっている。また、TONiC UHV リードヘッドは、四重極質量分析計で収集した RGA データをもとに外部機関からの認証を受けている。さらに、クリーンルームでの使用のための専用パッケージで納品される製品である。

TONiC には多様な仕様のリードヘッドをラインナップしており、さまざまなスケールとの組合せが可能である。

Song 氏は自社のエンコーダスケールの選定基準について、以下のように述べる。「我々が展開するハイエンドモデルでは、熱膨張をほとんどしない RELM 高精度スケールを使用しているものもあります。温度が大きく変化する環境でも位置決めの精度を確保できるからです。

例えば、真空室の温度は 100℃近く変化することも少なくありません。レニショーさんのエンコーダは市場で高い評価を得ているようです。TONiC は業界的にも定番で、さまざまな高性能装置に採用されています。それにアフターケアも抜群ですし、定期的に製品のアップデート情報をいただけます。当社としては、部品の納入遅れでお客様を失いたくないので、製品の納期厳守を最重要視しています」

VAD 社はナノレベルの精度を実現するために、極紫外線光による半導体マスク検査用の XY ステージの位置フィードバック制御用に RLE レーザーエンコーダを採用している。RLE は、各直線軸に設置された真空対応の平面鏡と、真空室外に設置されたレーザーヘッドからなるシステムである。

レニショーさんの位置フィードバックシステムは性能がよいだけでなく、コスト面でも優れています。それに、テクニカルサポートにはよく助けていただいていますし、トレーニングも充実していますまた、RLE レーザーエンコーダは、前工程用の半導体製造装置で実現したようなナノレベルという高い精度だけでなく、取回しのしやすさ、リードタイムの短さ、といった点も魅力です」

VAD 社では、レニショーの XL-80 を使用して、出荷前に製品のキャリブレーションを実施している。XL-80 は、機械のキャリブレーションと品質管理を目的としたレーザーシステムで、セットアップが容易なこと、位置決め測定精度が±0.5ppm と非常に高いこと、軽量で持運び可能なことが特徴のシステムである。

TONiC™ UHV with RELM

TONiC UHV エンコーダシステム

結果

TONiC エンコーダ、RLE レーザーエンコーダそして XL-80 レーザー干渉計システムが、VAD 社のモーションプラットフォームに対して高機能な測定ソリューションとして活躍している。

真空用としては、TONiC UHV リードヘッドと 20µm ピッチの RELM (ZeroMet™) スケールの組合せが採用されており、0.75±0.35μm/m/℃ (20℃) の熱安定性、±1μm/m の絶対位置決めを実現している。なおこのスケールは、両面テープだけでなく、真空でのガス抜き作業が不要なメカ式の取付けも可能な製品である。

RLE レーザーエンコーダは、最高分解能 38.6pm、非直線性誤差 (周期誤差) は±1nm を誇る。

Song 氏は以下のように締めくくる。「特に FPD や半導体製造で使われる精密装置など、真空用製品の今後の見通しとしては楽観的に考えています。そういった分野に向け、現在当社では関連したプロセスプラットフォームを開発しています」

フラットパネルディスプレイ (FPD) の自動光学検査 (AOI) 用ステージ

フラットパネルディスプレイ (FPD) の自動光学検査 (AOI) 用ステージ