ナビゲーションのスキップ

PAL Robotics 社が磁気式エンコーダを ロボットに搭載してバランス制御の課題を克服

このケーススタディでは、PAL Robotics 社の等身大二足歩行人型ロボット研究プラットフォーム REEM-C を取り上げています。REEM-C は、多くのアプリケーションに活用されているロボットシリーズの 1 つで、細部までカスタマイズ可能です。ナビゲーション、マシンビジョン、人-ロボット対話、人工知能、掴み動作、歩行、音声認識など、大きな可能性が見込める領域への応用研究に活用できます。

背景

ロボットが仕事の効率を向上させたり、空港で荷物を運んでくれたり、高齢者向けの住居介護サービスを提供してくれたりするような世界を想像してみてください。この世界の実現を目指すのが、スペイン、バルセロナの PAL Robotics SL 社です。世界的に有名なバルセロナのラスランブラス通りにほど近いテクノロジー地区の中心部に拠点を置く同社は、このようなロボット開発において先駆的な活動を行う革新的企業です。

同社はロボットの設計からプログラミング、アセンブリまでをすべてその賑やかなバルセロナオフィスで手がけており、エンジニアたちはロボット能力の高度化に向けて常に努力しています。

課題

PAL Robotics 社の Chief Technology Officer、Luca Marchionni 氏

PAL Robotics の Chief Technology Officer、Luca Marchionni 氏は、ロボットに関する最も難しい課題の 1 つとして、我々が普段気にも留めることがない歩行中のバランス維持を挙げています。

歩行を行うには、足が周囲の環境と作用しながら、様々な自由度において軌道を生成し、実行する必要があります。そのため、二足歩行ロボットの制御システムは、両足で地面に立つ状態と、片足のみで地面に立つ状態という、この 2 種類の状態を交互に遷移する必要があります。

当社は微小な弾性で非線形性を伴う減速ギヤを使用していることから、バランスの維持は難関です。そのため、モータと関節の両方の位置を把握することがとても重要です。

PAL Robotics 社(スペイン)

この交互遷移を実現するための制御則の策定は、ロボットの動力学につきまとう非線形性のために、簡単ではありません。分析手法を用いることはできず、複雑すぎて試行錯誤を繰り返すだけでは策定に至りません。代わりに、軌道最適化と呼ばれる数値的アプローチを使用します。このアプローチでは、ロボットの「理想的経路」を記述して、演算によりこの経路の最良近似値を算出します。この場合の「最良」の基準は、ロボットの理想的経路と物理的な制約を考慮して特別に選択されたコスト関数によって決まります。

人型ロボットの関節設計では、ロボットの容積とイナーシャをできるだけ抑えるために、空間と重量が厳しく制限されています。また、PAL Robotics 社のロボットの多くは人間と同じサイズで、最大 40 自由度を有しています。

解決策

AksIM™ アブソリュートロータリーエンコーダを搭載した REEM-C の膝関節

REEM-C を始めとする PAL Robotics 社の人型ロボットは、作業に合わせて様々な複雑動作に対応する関節を備えています。そして、各関節のサーボ制御には適用トルク、速度、位置に関する高性能のエンコーダフィードバックが不可欠です。

そこで、レニショーから PAL Robotics 社へ、アプリケーションごとに最適なエンコーダの選定についてアドバイスを行い、PAL Robotics 社の事業上のニーズや製品の理解についての強化を図りました。その結果、レニショーの関連会社の RLS が製作する非接触磁気式エンコーダの AksIM™Orbis™ が膝関節、手関節、肘関節に採用されました。またコンポーネントタイプの RoLin™ も採用に至りました。

レニショーとは、非常に良好な関係を築いています。製品が豊富で、それらすべてをカスタムできる点が特に助かっています。RLS のエンコーダは柔軟に構成することができ、通信プロトコル、リードヘッドのサイズ、インターフェースを様々な種類から選択できます。より軽量かつコンパクトで、より高い能力を備えたロボット製作を目指している当社としては、選択肢が多いほど助かります。

PAL Robotics 社(スペイン)

歩行中に片足でバランスを取る REEM-C

PAL Robotics 社では、バランス制御用に、各ロボットの足部にフィードバックフォースシステムを実装して、REEM-C のようなロボットの安定性評価指標であるゼロモーメントポイント (ZMP) を算出しています。その後、算出した ZMP を「ファジー論理」PD コントローラに送り、ZMP の理想値を追跡することで、バランス維持と外乱除去を実現しています。このコントローラは、ロボットの質量中心 (CoM) 位置を調整して、ZMP を常にサポート領域(脚部の下)内に維持することを目的としています。二足歩行を実現するには、位置、速度、加速度に関するロータリーエンコーダのフィードバックを利用して、脚関節の角度を的確に制御する必要があります。

結果

肘関節と手関節に AksIM と Orbis ロータリーエンコーダを搭載した REEM-C

二足移動を安定して行うためには、バランス制御が特に重要であり、エンコーダ出力を活用することで、ロボットの姿勢の推定や、すべての関節の位置、速度、加速度の参照値の生成が可能になります。

磁気式エンコーダは厳格な空間および性能上の要件を満たすことができるため、PAL Robotics 社にとっての柔軟な位置測定ソリューションとなりました。同社が選択したエンコーダは、非常に広い性能範囲を備えているため、自由度の高い設計を行うことができます。そして、各関節に作用する瞬間的なトルクを制御することでバランス制御を行い、ロボットの手足を正確に位置決めして安定した歩行動作を実現しています。また、エンコーダの精度が高いため、制御信号内の誤差を最小限に抑えることができ、コントローラから素早くロボットの位置を調整して、ZMP を常に脚部のサポート領域内に収めることができます。

PAL Robotics 社について

PAL Robotics 社は様々な用途向けの最先端の人型ロボットとサービスロボットの設計・製造を行っています。同社は、夢を共有する 6 人のエンジニアによって 2004 年に設立されました。同社の最初のロボットは、チェスをするロボットアームの製作プロジェクトから生まれた REEM-A と呼ばれるロボットです。以来 PAL Robotics 社は着実に製品ラインナップを拡充し、現在では、家庭や産業環境での人々のサポートを目的とした TIAGO を含む 6 種のロボットモデルを取り揃えています。また、同社の TALOS というロボットは、製造ラインにおいてアクセスしにくい場所のねじを締めたり、重機の取扱いをサポートしたりするようなタスクを行います。


PAL Robotics 社の詳細については、下記サイトをご覧ください。www.pal-robotics.com

RLS について

RLS d.o.o はレニショーの関連会社です。産業オートメーション、金属加工、紡織機、パッケージング、IC や PCB の生産、ロボットなどの用途向けの各種の頑丈な磁気式リニアモーションセンサーと磁気式ロータリーモーションセンサーを製造しています。


RLS の詳細については、下記サイトをご覧ください。

ダウンロード

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