ラマン分光と PL 分光のための複数レーザーと格子
inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープでは、回折格子やフィルタ、レンズなどを簡単に切り替えることで、複数のレーザー波長で柔軟な分析を行うことができます。また、エンコーダ式ステージとキネマティックマウントを介して光学系を高い精度で位置決めできるため、手作業による位置調整が不要で時間の節約にもつながります。
ラマン分光のための紫外線レーザー、可視光レーザー、赤外線レーザー
ラマン分光では、単色光をサンプルに照射し、ラマン散乱光を分析します。強度が高く、単色で直線的な光を照射できるため、ラマン分光にはレーザーが理想的です。ラマン強度や空間分解能、蛍光バックグラウンドは励起レーザー波長で変化するため、最適なレーザー波長を選択することが重要です。
inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープは幅広い励起レーザー波長に対応しています。
• 紫外線 (UV) レーザー波長: 229 nm, 244 nm, 266 nm, 325 nm, 355 nm, 364 nm.
• 可視光レーザー波長: 405 nm, 442 nm, 457 nm, 473 nm, 488 nm, 514 nm, 532 nm, 633 nm, 647 nm, 660 nm.
• 赤外線 (IR) レーザー波長: 785 nm, 830 nm, 1064 nm.
蛍光を含んでいるサンプルに対して可視光レーザーを使用すると、強い蛍光バックグラウンドを含んだスペクトルが生じることがあります。強いバックグラウンドでラマンバンドが影響を受けるおそれがあるため、近赤外線レーザーや UV レーザーに切り替えると蛍光を避けることができます。ポリマーや有機材料の分析に有効な手段です。
一部のサンプルに対しては、UV レーザーを使うことで共振が起こりラマン信号が大幅に増強されることがあります。共振によりラマン測定の感度が強化されるため、薄い分子膜の検出が可能になります。
頑丈なキネマティックマウント
キネマティックマウントの接触面は超硬製です。非常に固く、スチールよりも優れた摩耗耐性を有しているため、長期にわたり安定した動作が可能です。
導電性ポリマーから複数のレーザー波長で取得したスペクトル。近赤外線の 785nm のスペクトルからはラマンバンドが明確にわかります。対称的に 514nm または 633nm を使った可視スペクトルには、強い蛍光バックグラウンドが含まれています。
分子単層の UV 共振ラマンスペクトル。Zhou Bing 博士 (Institute of Theoretical Chemistry, Jilin University、中国) によるデータ提供。
効果的なラマン分光器とは
レーザーやレンズ、格子、検出器といったラマン分光器の構成について紹介するウェビナーをご用意しております。感度や空間分解能、スペクトル分解能とどのように関連しているのかにも触れています。
ラマン分光のためのレイリーフィルタ
ラマン分析時、サンプルに当たる光の大半は弾性的に散乱します。そのラマン散乱光よりも平均で 1000 万倍強いのがレイリー散乱光です。そこでラマン分光を正常に行うために、レイリーフィルタを使って弾性散乱光が分光器に入るのを止めます。一般的に、レーザー波長 1 点につき、1 点のレイリーフィルタが必要です。inVia が 4 点のレイリーフィルタを自動で切り替えるため、通常はユーザーが手動でフィルタ切替えを行う必要はありません。
inVia は幅広いレイリーフィルタテクノロジーを搭載しています。中でも特に一般的なのが最小 100cm-1 のラマンバンドの検出のための高効率エッジフィルタです。また inVia は以下にも対応しています。
• フォトルミネセンス (PL) 分光のためのリップルフリーの幅広フィルタ
• ストークスバンドとアンチストークスバンド両方を観察するためのノッチフィルタ
• 低周波ラマン分析のためのローカットフィルタ
低周波ラマン分析のためのフィルタ
inVia は幅広い低波数や低周波フィルタに対応しており、Eclipse フィルタなら、最小約 10cm-1 のラマンバンドの分析が可能です。低エネルギー構造変化、結晶格子モード、重原子を伴う振動モードおよび気体の回転挙動を伴うサンプルを研究できるようになります。

キネマティックマウントによる光学系の簡単切替え
inVia では、キネマティックマウントにより光学系を簡単に切り替えることができます。キネマティックマウントによりフィルタやレンズ、格子の位置決めが正確かつ高い再現性で行われるため、手作業で位置調整を行う必要がありません。例えば、UV レーザーと 1064nm 赤外線レーザーでのラマン分析では、別のレンズと格子を使用する必要があることがほとんどです。この切替えを簡単に 5 分未満で行えます。
キネマティックマウントの接触面は超硬製です。非常に固く、スチールよりも優れた摩耗耐性を有しているため、光学系を適切な位置に確実に配置できます。

inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープ内のレイリーフィルタ用のキネマティックマウント
ラマン装置に必要な回折格子の数
inVia は 2 個の回折格子を自動で切り替えられるため、手動で切り替える必要はほとんどありません。さらに、SynchroScan™ により、回折格子を切り替えなくても広いスペクトル範囲で高分解能スペクトルを取得できます。
レニショーのラマンシステムでは、回折格子を基にラマン散乱光を構成波長に分離します。分散した光をシステム内でレンズが CCD 検出器のピクセルに集約し、ラマンスペクトルとして読み取られます。通常は、レーザー波長 1 点と回折格子 1 個がペアになります。inVia では通常、約 1cm-1 のスペクトル分解能を達成するために、UV レーザー、可視光レーザーそして IR レーザーそれぞれに別々の回折格子を使用します。スペクトル分解能 1cm-1 であればほとんどのサンプルを分析できます。
inVia では、キネマティックマウントにより回折格子を簡単に切り替えることができます。溝の密度が高い回折格子を選ぶと、0.3cm-1 という高いスペクトル分解能を得ることができ、光結晶質の固体や気体の回転モードから非常に狭いラマンバンドを解明することができます。反対に広いスペクトル範囲でのフォトルミネセンス (PL) 分光用に、密度の低い格子をセットすることもできます。

inViaTM コンフォーカルラマンマイクロスコープでの回折格子交換の様子