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ラマン分光:高度な宝石分析技術

National Gemstone Testing Centre(中国国立宝石検査センター、NGTC)は、中国の公的な宝石検査施設です。NGTC が、ダイヤモンドや翡翠など、宝石の非破壊分析と特性評価にレニショーの高性能共焦点ラマン分光装置を使用するようになってから、もう 20 年近くになります。

背景

1978 年に始まった高度経済成長により、中国には世界中の宝飾品業界の注目が集まるようになりました。ダイヤモンド、ルビー、サファイアなどの宝石類は、何世紀にもわたり社会の中で非常に大きな役割を果たしてきたわけですが、近年は中国の経済成長に伴いこれらの高級品に対する需要が急激に高まっています。現在、中国の宝石業界の年間小売売上高はおよそ 5,000 億元(約 720 億ドル)と推定されています。

宝石の需要増に伴って偽造も増加傾向にあります。最も経験豊かな宝石鑑定士であっても、真贋の判定は時に困難を極めます。宝石鑑定に対する企業と消費者双方でのニーズの高まりを受け、宝石検査研究所では高度な科学機器の導入が徐々に進んでいます。

NGTC は中国の宝石業界のための公的な検査機関で、新たなテスト手法および技術の開発と推進を行っています。NGTC の検査研究所で日常的に利用されている主力機器が、レニショーの inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープです。

課題

偽造品の製作技術が複雑化すれば、偽造品の特定方法もそれに合わせて高度化する必要があります。現代の技術によって加工された宝石を目視で区別することは難しくなってきたため、研究所はさまざまな分析方法を利用し始めています。

国家認定宝石品質保証検査官であり、NGTC に属する北京宝飾品研究所でテクニカルディレクターを務める Zhang Jian 氏は言います。「宝石の鑑定は、腰を据えて取り組むべき仕事です。宝石のサンプルは、その 1 つひとつが、複数のテストと特性評価を受けます。まず、宝石鑑定士が、目視検査、屈折率検査、蛍光観察といった定常検査を行います。次に、赤外線分光法やラマン分光法などを用いてさらに検査します。これらの手順を 2~3 人の検査官が繰り返し、同じ判定が下されてようやく検査結果が認められるのです」

解決策

NGTC がレニショーのマイクロスコープを導入したのは、中国で同製品の販売が開始された 1999 年です。現在は、北京、上海、深圳にある各研究所でこのマイクロスコープを使用しています。レニショーのラマン分光装置は、宝石の真贋を鑑定するとともに、宝石が天然石か、合成石か、処理石かを判定することもできます。宝石の非破壊分析が可能であることが大きな利点です。

inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープが宝石の分析に最適である理由は、その非常に優れた柔軟性です。inVia には、通常のサンプルテストに使用する標準の小型マイクロスコープサンプルステージと、大量の原石などのバルクサンプルテストに適したオープンマイクロスコープサンプルステージという 2 つのサンプルステージを装着することができ、切り替えも容易です。NGTC の北京本部で使用している inVia は、325nm、473nm、532nm、785nm、830nm のレーザーを搭載しており、中国国内の宝石業界で現在最も充実した構成です。

ダイヤモンドの同定は NGTC 最大の検査事業であり、ラマン分光が果たす役割は極めて重要です。人工ダイヤモンドの合成には、化学蒸着 (CVD) や高温高圧 (HTHP) などの方法が現在最も広く用いられています。CVD 方式で製造されたダイヤモンドは、inVia を使用し、2 本の 737nm ラインを特徴とするフォトルミネセンスで同定します。

レニショーのラマン分光装置は、翡翠などに対する多成分サンプル試験や特性評価に使用することもできます。翡翠や長石などの成分は、構造が比較的細かく、サンプル内に共存することが少なくありません。このような場合には、ラマンマッピングでしか成分の同定と特性評価ができません。

inVia には、上記に加え、結晶欠陥の調査、宝石の含有物分析、宝石の亀裂における充填物の有無の判定といった用途があります。inVia は、さまざまな固体、液体、気体含有物を含む緑柱石の分析に最適なツールです。これらの含有物と緑柱石基の結合スペクトルが得られ、それを基に、液体と気体の参照スペクトルデータベースから構成成分を同定することができます。

結果

NGTC は、レニショーのラマン分光装置を使用することで、宝石の真贋を鑑定できるとともに、それが天然石か、合成石か、処理石かを判断することもできます。inVia なら、宝石内の奥深くにある固体、液体、気体含有物をも特定することができます。Zhang Jian 氏は次のように述べ、宝石鑑定におけるラマン分光装置の可能性を非常に楽観視しています。「応用的見地から、宝石検査業界におけるラマン分光装置の役割に疑いの余地はありません。ただし、検査機器にはそれぞれに長所と短所があり、1 つのツールだけですべての宝石サンプルに対応することは不可能です。ですから、検査の過程では、試験サンプルの特性に基づいて適切なツールを選ぶ必要があります」ラマン技術の継続的な進歩と、検査需要の増大、そして検査機関の発展を考慮すると、ラマン分光は宝石業界において大きな可能性を秘めています。

このケーススタディは、2016 年 7 月 18 日に www.instrument.com.cn に公開された Ye Jian 氏の「Laser Raman Spectrometry: Advanced Weapons for Gemstone Identification(レーザーラマン分光測定:宝石鑑定のための高性能機器)」を基に編集したものです。

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  • ケーススタディ:  ラマン分光 - 高度な宝石分析技術