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天体望遠鏡、レニショー製品で性能アップ

背景

ワイズ天文台―Tel Aviv 大学が所有および運用するこの天文台は、40 年以上にわたって天文学の研究をけん引してきた。イスラエルのネゲヴ砂漠内の、最寄りの街から 5km ほど離れた場所に位置しているため、人工の光に邪魔されない、雲ひとつない夜空を高い確率で観察できる。ワイズ天文台にある口径 1m の天体望遠鏡が、世界各地の天文学や天文物理学の研究者たちから頼りにされている所以である。

この天体望遠鏡は、既知の星周辺の惑星を発見すべく、フルに機械化され、超高分解能の分光器を搭載している。設置された 1971 年当時からあまり変わってはいないものの、モータやベアリングなどいくつかのコンポーネントにはそれぞれ寿命があり、パフォーマンス面での問題が起こりつつあった。その中でも重要なのがポジションエンコーダである。

エンコーダは望遠鏡の位置を検出するために望遠鏡の軸に組み込まれている。完成当時に組み込まれたエンコーダからは誤情報が出力されており、そのせいでソフトウェアが警告もなくシャットダウンしてしまう事態が起きていた。そこでエンコーダの交換が必要であるという結論に至り、エンコーダ探しが始まった。

他の天文台の意見やインターネットでのリサーチを経て選定されたのがイスラエルに拠点を構える Soulutions 社である。レニショーエンコーダのオフィシャルプロバイダだ。

ワイズ天文台の口径 1m のメイン望遠鏡

ワイズ天文台の口径 1m のメイン望遠鏡

課題

「軌道の動きで画像が変わってしまうため、クオリティの高い画像を取得するのは非常に難しい作業です。稼働していない時間を少しでも短くするために、速やかに対応する必要がありました」とは、Soulutions 社でレニショーエンコーダ製品を扱う部門でマネージャを務める Benny Naim 氏の言葉だ。

「新しいエンコーダをどこに取り付けるのがよいかを決めるために、天体望遠鏡の動きについて学び、要求精度や速度などについて理解を深めました。その中でオーダーメイド設計が必要になるという話になりました。

天文台がある場所も考慮する必要がありました。砂漠の温度は大きく上下します。夏の日中は暑くても、夜は寒くなります。気温が激しく上下すると金属が伸縮してしまいます。そのため、エンコーダを望遠鏡に取り付けるためのブラケットの設計時、天候が変化しても望遠鏡の精度に影響が出ないよう、熱伸縮を考慮する必要がありました」(Benny Naim 氏)

レニショーさんの製品力だけでなく、現地チームの豊富な知識のおかげで、我々にぴったりのソリューションが見つかりました。天体望遠鏡に組み込まれている位置決めサブシステムの精度、分解能と信頼性が劇的に向上しました。

ワイズ天文台 (イスラエル)

天体望遠鏡のロール軸に取り付けた RESOLUTE リードヘッド 天体望遠鏡のロール軸に取り付けた RESOLUTE リードヘッド

解決策

そこで提案されたのが、RESOLUTE リードヘッドを 2 個取り付けることだ。RESOLUTE は、リニアシステムでは 100m/s 以下の速度で 1nm、ロータリーシステムでは 36,000rev/min 以下で 32bit の分解能を実現した世界初のアブソリュートエンコーダである。周期誤差とジッタが非常に低いため、同等クラスの他のエンコーダよりもはるかに優れたリニアエンコーダシステムを実現できる。

またスケールとしては、RTLA30-S が採用された。機材からスケール自身の熱伸縮を切り離すことができる、薄くて扱いやすいステンレススチールテープスケールである。高い耐久性、優れた位置安定性とモーションコントロールパフォーマンス、広い取付け高さの公差、なめらかな速度制御を可能にする低周期誤差 (±40nm) が特徴である。

「天文台への最初の訪問時に、既設のエンコーダは取り外せないと結論を出しました。取り外すには望遠鏡をバラバラに分解しなければならず、それでは研究者たちに多大な影響が出てしまうからでした。

そこで、元々のエンコーダの接続を切り、新しいエンコーダを特製のブラケットで組み込むことを提案しました。これなら、短時間で作業を終わらせることができます」(Benny Naim 氏)

望遠鏡の各軸への取付け作業は現地への 2 回の訪問で完了した。ロール軸は望遠鏡の向きを、パン軸はレンズとカメラの横方向の動きをそれぞれ制御している。

「高度診断ツール (ADTa-100) のおかげで、望遠鏡のコントローラにエンコーダシステムを接続する前に、システムのテストを行うことができました。

ソフトウェアを介して、2 個のリードヘッドそれぞれからの信号強度が問題なく、良好なモーションコントロールを確立できていることを確認してからコントローラに接続しました」(Benny Naim 氏)

ADTa-100 は RESOLUTE からリアルタイムにデータを取得するツールであり、取得したデータはソフトウェアである ADT Vie で確認することができる。エンコーダを取り付ける際や、既存機のトラブルシューティングなどに便利なツールである。

結果

ワイズ天文台の Arie Blumenzweig 氏は以下のように述べる。「レニショーさんの製品力だけでなく、現地チームの豊富な知識のおかげで、我々にぴったりのソリューションが見つかりました。

天体望遠鏡に組み込まれている位置決めサブシステムの精度、分解能と信頼性が劇的に向上しました。この新設備を今後より一層活用していきます」

Naim 氏は以下のように続ける。「今回のプロジェクトは他に例のないもので、簡単なものではありませんでした。ですが、その分、大きなものを得ることができました。稼働開始から 1 か月経った頃、研究者の方々から高い評価の声が聞こえてきました。そして、ワイズ天文台の他の望遠鏡についてもアップグレードしたいとの話をいただきました。研究分野でもレニショーのテクノロジーが役に立つと知って、嬉しくなりますね」

The Whirlpool Galaxy (M51)

Whirlpool Galaxy (Messier 51)

ワイズ天文台について

Tel Aviv 大学が所有および運用する、天文学の研究施設である。大学の南約 200km の位置にある町 Mitzpe Ramon 近郊、ネゲヴ砂漠内にある。口径 1m のリッチークレチアン式望遠鏡や多数の小型自動天体望遠鏡など、多くの地質学や天文学の研究機器を備えている。

イスラエルの南に位置するネゲヴ砂漠内にあるワイズ天文台