高速での高精度測定
スペイン、マドリッドを拠点とし、航空産業と防衛産業向けの複雑なパーツの製造を専門とする高精度エンジニアリング企業は、レニショー REVO® 5 軸計測ヘッドとプローブシステムを採用しました。これにより、検査時間を 5 分の 1 近くまで短縮し、大容量の CNC 工作機械に匹敵するスピードで品質管理と検査を行うことができるようになりました。
現在、少なくともテクノロジーの領域では、様々な方法で製造作業が簡素化されています。例えば、工作機械のプログラミングと操作が簡単になり、ラピッドプロトタイピングにより製品開発がこれまで以上に高速かつ低費用になり、ユーザーフレンドリーな CAD ソフトウェアにより物理的なプロトタイピングの必要性も排除されるようになっています。これらの要因は、実際に製造する製品があまり複雑でない場合に当てはまることで、サニサドス・エスクリバノのように、数百万ドル規模の複雑な航空システムを製作する場合には、事情が異なります。
「工作機械の購入時には、すべてのオプションをオーダーしている」と言うのは、同社のプロジェクトマネージャ、ファン・A・ウメネス氏です。「しかし、最高の機械を備えることは、単なる一要素に過ぎません。当社の顧客からは、非常に厳しいパーツ検査が求められているため、特に複雑で非常に公差が厳しいパーツの製造では、計測作業でボトルネックが発生する可能性があります。」
彼は引き続き次のように説明します。「当社では顧客のリクエストに応じて、製造パーツの 10%~100% を検査しています。最近 Metris CMM に取り付けたレニショーの REVO システムは、タッチトリガーシステムでは困難または不可能な非プリズム面の計測を非常に短時間で行います。Typhoon などのアビオニクス機器のシャシーなど、一部のケースでは、REVO により検査のスループットを 5 倍に向上し、パーツあたりの検査時間を平均 80% 近く短縮しました。」
REVO 5 軸ヘッドの主な特色は、3 軸スキャニング方式の限界を克服したことです。3 軸スキャニング方式では、大きな質量の CMM を高速で動かそうとするため、加速と減速による慣性誤差が発生しました。この理由により、3 軸スキャニングでは精度を維持するため、計測速度を遅くする以外、方法がありませんでした。しかし、REVO はヘッドと測定機の同期を取りながら計測を行い、動的誤差を発生せずに、部品の形状変化に素早く対応します。CMM は、精度に影響を与えることなく、一定の速度で計測を行いながら移動することができます。
さらに REVO は、位置決め角度が無制限で、計測面のすぐ近くで測定点を検出する、独自のプローブ技術が組み込まれています。スピード、柔軟性、および精度を兼ね合わせているため、円形、螺旋形、スイープ、ガスケットスキャン、そして必要な場合には、高速シングルタッチルーチンをはじめとする幅広い計測アプリケーションで優れたパフォーマンスを発揮します。
需要の拡大に合わせた拡張
エスクリバノの工場を訪れることができた幸運な見学者は、このような製造活動に必要な大型設備投資の規模と重要性を痛感することでしょう。ファン・A・ウメネス氏は、設備に年間 100 万~150 万ユーロを投資しているといいます。同社の CNC 機械のほとんどはスイス製か日本製の最高級マルチパレット、多軸のもので、牧野、松浦、Mazak、Sodick のワイヤ EDM や Jung の CNC 精密研削盤を置いています。これらはすべて最新モデルで、セットアップと非加工時間を短縮するために、多くの場合レニショーの OMP40-2 小型タッチプローブと NC4 非接触式レーザーツールセッターシステムを使用して入念なメンテナンスと設定が行われています。
エスクリバノは、現在の建物が手狭になったため、新設備を設計、建設して、数週間以内に引越すことを予定しています。それまで使用することになるメインワークショップの隣の 2 つの小さな部屋には、同社の検査装置が所狭しと置かれています。2 つのうちの大きな部屋には、3 台の DEA Global Advance 三次元測定機(CMM)を置き、レニショーのプローブでサーマルカメラから統合攻撃戦闘機用のコンポーネントにいたるパーツのサンプルをチェックしています。メインの計測ラボの隣にある小さな部屋には、同社最大の CMM、Metris LKV CMM を置き、レニショーの REVO 5 軸計測ヘッドとプローブシステムを配備しています。これは、最近行われた検査装置への総額約 30 万ユーロの設備投資の一環で導入されたものです。
ほとんどの精密エンジニアリング企業は、Metris とレニショーの REVO を組み合わせることで、計測ニーズを充分に適えることができます。しかし、エスクリバノは一般的なワークショップとは異なり、顧客からより厳しい要求が出されるため、粗さを測定するための白色光干渉顕微鏡や、パーツ表面のサイズと感触を評価できる接触式プロファイルメーターなど、他の高度な計測システムへの設備投資が求められます。
高度なノウハウと技術
マドリッドに本拠を置くエスクリバノは、非常に稀な存在で、このように高度なアプリケーション向けのコンポーネントとシステムを提供できるノウハウと技術を備えた民間のエンジニアリング会社は非常に限られています。エスクリバノでは、誰も顧客と製品に関して話すことはできませんが、ウメネス氏はその装備と方法について次のように快く説明してくれました。
「当社では、航空機グレードのアルミニウム、ステンレススチール、ニッケル合金、銅、チタンを使用した複雑な 5 軸パーツの機械加工を行っています。この種の業務に秀でるための唯一の手段は、技術と要員に必要な投資を行うことです。当社の顧客は、世界で最も優れた装備を備えるサプライヤーを選択することができるため、顧客が求めるものを必要なタイミングで提供できる体制を整えることが必要になります。」
エスクリバノが製造するコンポーネントのほとんどは、米国の国防セクター向けです。米国には、世界の他の国よりも民間の小さな精密エンジニアリング会社が数多く存在しますが、米国の国防組織が品質が大切になる複雑なパーツの製造を国内企業ではなく、スペインの企業に発注しているのはなぜでしょうか。
「米国よりもスペインの人件費が安いから、当社が発注を受けたと考える人もいるでしょう」とウメネス氏はいいます。「しかし、その考えは間違いです。それが本当なら、単にアジアに発注が行くでしょう。本当の理由は、当社が最高の技術に投資し、高いレベルで人員のトレーニングを行うことで、高い競争力を身に付けているためです。当社ではスペインやヨーロッパの競合企業を基準にするのではなく、世界最高レベルを目指しています。」
技術の発展により汎用精密エンジニアリングは簡素化されているかもしれませんが、エスクリバノではいかなる水準のエンジニアリング精度でも達成できるよう努力していることから、ここ数十年で最悪の不況が訪れ、スペインも他の国と同様、その影響を被る状況でも、家族経営のエスクリバノは引き続き毎日 20 時間にわたる製造活動を続けています。